夜のしじま

大阪でのスピーカー展示会が終わりました。半日のイベントでしたが、前日に東京から大阪に移動し、心斎橋のホテルで二泊して東京までアルファで走って戻る三日間の行動は訳あって少し大変でした。

持病の腎臓の治療のため、新薬を飲み始めました。東京の食事は、濃い味ですし、またそれが好きなので醤油ドバドバ生活を長い間送り、腎臓が悲鳴をあげました。新しい薬を飲み始めると一カ月の間に、体に大きな波が来ると説明を受け、実際にその波に飲み込まれました。時を同じく、プールで耳に水が入ったような違和感が両耳に発生。そして利尿作用の強い薬の服用の始まりとともに、頻繁なるトイレ詣が始まりました。トイレで水分を出す訳ですから、当然水分補給が急務となり1日で3リットルほどの水分を摂取しています。そして水分排出と一緒に起こる糖の排出。必然的に起こる低血糖。はじめて体験しましたが、糖分が不足するともうヘロヘロですね・・・歩けなくなりました。弟が低血糖で倒れたことがありましたが、ああ、こういうことなんだと理解した訳です。

今や画家に転向された「横尾忠則」氏は、耳の話を本にしておられます。その内容は、「ぼくだけが聞こえる静寂の音」と表現されてらっしゃる「シーン」という音の存在。静けさを表現する際の「シーン」という音を聞いたと書かれています。この音こそが、静寂そのものの音なんだと。あれが夜の「しじま」の音なんだと。
私も、解脱できたのか「シーン」音が聞けるようになりました。ですが、自分が話す声が頭の中でハウリングを起こすという副産物まで発生し、これはイカンと思い耳鼻科の門を叩きました。
「突発性難聴」が今の状態のようです。大阪の展示会の二週間前ぐらいでした。この「シーン」がまるで真夏の蝉の鳴き声を少し絞ったほどの音量で、聴力検査でも信号音が聞こえないほどの音量になっていまして、どうもこれはヒドイ耳鳴りと断定せざるを得ない状態です。耳鳴りは、聴力検査の信号音を聴きにくくするので、正確な聴力測定もできていないかと思われます。それに二週間後の展示会では、自分の声がハウリングを起こして話ができそうもない。困ったな・・・
聴力検査は、蚊の鳴くような音量で高域から低域まで、信号音が左右別にヘッドフォンに流れ、信号音が聞こえたら握ったスイッチを押します。これを外の音を遮断した小部屋の中で行います。駆け込んで診察してもらった時は、左右の耳は感度がバラバラになっていました。
スピーカーの特性を可視化するグラフにも似た、聴力測定のグラフ。音を定量化できる恩恵は、こんなところにもあるんですね。ちなみに測定範囲は、125Hzから6000Hzまでです。なんだかスピーカー特性を計測する範囲より多少狭い。そして、ヴィンテージユニットの特性グラフと自分の耳の性能の幅は、なんとなく似ているではないですか。耳のヴィンテージユニット化?・・そんな事ないか・・・。でも意外にフラットな特性ですね。しかし6000Hzでもう10Hzも下がっています。

救ってくれたのが「イソバイド」という飲み薬。確か以前にも飲んだ記憶があります。無慈悲な味は、飲まれることを拒絶するかのような、不凍液のような、あるいはセメダインのような、胃が溶けだす感じの味付け。でも負けずに日に3回飲むのですが、この薬が効きます。しかし、腎臓の薬「フォシーガ」の働きと近い機能を持ち、体の水分をどんどん出してくれるんですね。もう頻尿。

微妙に起こるアンプのノイズを無くすための努力や、共振への対応であるとか・・・・ アレッ、「シーン」という音のしじまと比較すりゃ、なんていうことないじゃん。アンプからのノイズは、確かに健康な時は少し気になるけれど、体調崩すと些細なことに感じてしまう。そうか、まずは健康なんだと結論に達する訳です。

 

「ポートレート・オブ・ジャコ」はジャコ・パストリアスが作曲した曲が多く入っている作品集です。低域を楽しむ時に絶好なアルバムです。ブライアン・ブロンバーグは良いですね。私はジャコよりブライアンの方が好きです。以前の平面バッフルだったら今の様には楽しめなかった。