トランスの復活

少し前に、Telefunkenトランスの話をしました。
短い間、楽しませてもらいましたが、突然音が途絶えやむなくベンチ入りしていました。そこで励磁スピーカーの師匠・原さんに面倒見ていただけないかお願いし、心なしか良い音になり無事復活しました。配線のハンダが外れていたようで、剥き出し配線はダメージ受けやすいようです。「トランスの中で断線していなくて良かったです」という言葉とともに、トランスを手渡してもらいました。「ケースに入れた方が良いかも」という話でしたが、ただ、このトランスはとてもルックスが良いので、このまま使用することにします。なかなかこの風情は作れません。

原さんによれば、Telefunken製ではないようで、東欧製のトランスだそうです。「剣がX字形にクロスしたマークが入っているので分かります」という話を頼りにルーペでよく見ると、確かにマークが印刷されています。見落としてました。老眼の為せるわざ・・・です。さらにTESLA製ではないかという話です。マークと一緒にプリントされている64は、もしかして1964年製かも。この頃は、チェコはまだ冷戦時代なので、もしかしたら軍用のモノだったかもしれませんが、これは塗装色と剣マークからの推測です。今でもプラハなんて聞くと、なんだか時別な感情が起こります。

早速、トランスをネットワークプレーヤーLUMINとアンプの間に入れて音楽を流します。以前はTelefunken L6で楽しんでいましたが、今は前のままPhilips 励磁10吋を聴いています。元々低域が豊かなPhilips 10吋ですが、このトランスが入ると、より小音量で低域に音楽的満足感が得られます。夜中に音楽聴きながら仕事するには最高の組み合わせです。原さん曰く「損失がとても少なく良い感じ」ですが、全く同感でとにかく美味しい調味料です。塩分カットを言い渡された身には・・・う〜ム関係ないか・・
ユニットが変わって、より美点が強調された感じがします。以前作ったアンプでも、ヴィンテージスピーカーを充分楽しむことができるのは嬉しいですね。電気的知識に欠けるので、トランスの作用は、まるで魔法の世界なんですが、オーディオはまったく奥が深い。

アンプを改造して、好みの音が出るようにする。なんてことは、普通はやりませんし、できません。だから評判を参考にしたり、ブランドで選んだり、どこかで試聴したりして高価なアンプ郡の中から自分に合ったモノを選びます。購入したら、普通は長い期間使うことになります。でも、不幸にも好きな音ではないと気がついても、なかなか対処は難しいです。
こんな時、問題解決法としてトランスの導入は、金銭的にも、対処法としてもリーズナブルな方法かもしれません。まあ、良いトランスと出会えれば、という条件は付いてしまいますが。

ピアノの高音を木琴のように感じることがありました。フジコ・ヘミングさんのコンサートでそれを感じ、それ以来ピアノの高音に対して少し身構えるようになりました。実はその音が少し苦手でして、フジコ・ヘミングさんのアルバムは聴いておりませんでした。しかし、このトランスを通すと、コンサート会場で購入したアルバムは、耳に刺り鋭すぎるように思える音が和らいで、気持ちよく聴こえてきます。改めて聴くフジコ・ヘミングさん、良いですね。きっと会場が良くなかったのかな、残念だったな。こんな音で彼女の演奏を聴きたかったな。
プラハなんて地名が頭をかすめ、木住野佳子さんの「Praha」を味わいながらこの文を書いています。