RFT L2302 と L2322という姉妹

 

 

 

L2322 / 1970年代 東ドイツ製

13cm用の箱をデザインしてから、どうも13cmが気になってイケません。励磁の13cmは、これまで全くお目にかかれていませんが、そんな中でRFT/L2302の箱入娘が嫁いできました。ブランニュウな感じの目新しいL2302。実は一番聴きたかった13cmです。井上教授の本で拝見してからずっと気になっていました。

コンシューマ向けと思われるLP 471/2とは違う、本格的な匂いを漂わせるRFT L2302は、やはりプロユースな音です。13cmとは思えない音は、濃厚ですが、前に飛び出してくる力強い音質です。前回のTESLAと同じ種類の音質で、モニタースピーカーを感じさせてくれます。しかし輸送のストレスからか、時々ブツブツ文句を言い出しました。そんなこと言うなよ・・と言う感じでゆったり系のアルバムを、エージングを兼ねて流すこと丸一日。だいぶブツブツ文句が出なくなり、その性能を発揮し始めます。でも、まだ時々ブツブツ言うんですね。1日に数回文句を言ってきますが、無視してエージングを続けています。そんな折、L2302の後継機種L2322を入手できることになりました。

L2302のエージングと並行して、L2322のエージングも始めます。ここ数日、平面バッフルにはPhilipsの励磁10インチが収まっています、その10インチの間に箱入り娘のL2302が置いてありますが、曲にもよりますが、時々ドッチが鳴っているか間違えることがあります。L2302は、そんな感じでサイズを超えてエージングが進んでいます。全く驚きの一台です。もう5日ほどエージングが進み、文句を言わない日が続いています。

L2322はユニットだけで嫁いできましたから、早速13cm用の箱に入れてエージングを始めます。このL23シリーズには、ユニットの取付穴がありませんので、固定クリップが必要になります。

どちらのユニットも、エージングが進み順調に音楽が流れ始めました。前回のTESLAの時もそうでしたが、今回姉妹もクラシックが非常に気持ち良いです。ヨーロッパ圏のユニットたちは、DNAの中にクラシック音楽が書き込まれているようです。ドイツなどでは、どこに行っても自然にクラシックが流れている、と考えていましたが、実際はテクノやエレクトリック系が主流になっているとか。どこにもクラシック無いな、だそうです。何百年も同じクラシック系の音楽だけが流れている訳はないですね。日本だって和楽器の音は、ほぼ聞くことがないですもん。雅楽なんて聴きたくても聴ける機会は滅多にありません。非常に残念なことです。

L2302は箱入り娘。密閉箱入り娘です。それに対してL2322は後面開放の箱入り娘。実はこの差が大きく音に影響してきます。前回入れていたRFT LP 471/2は、13cm後面解放箱で何くわぬ顔して低域から高域まで普通に良い音が出ていました。ところがL2322では低域不足を感じてしまいます。ただしLP 471/2に比べL2322の方が圧倒的なスピード感です。70年代のモニタースピーカーは、それなりの条件を必要とするようです。3.5リットル容積の小さな後面解放箱には、民生用のラジオのような、狭い箱でも音域が広く出るように設計されたユニットの方が相性が良いです。L2302の密閉箱は、ユニットのパワーに負けて本来の音ではない音が混ざります。アンプは、ヴィンテージユニットで低域がバランスよく出せる回路設計ですから、これは少し残念な結果になってしまいました。L2322は箱入り娘のL3202とは、箱の違いから随分と低域表現で差が出てしまいます。

しかし、このままだとL2322でBeatlesは美味しく味わえない。好きなSony Whiteの「Midnight Blues」も音が少ない感じです。Philips 励磁10inchよりギターの響きが鮮烈なのは、これは良さとして考えています。ところが、Merody Gardotの「Your Heart is As Black As Night」を聴くとその印象がガラッと変わり、豊かな低域と濃密な空気感に変わります。このスピーカーに合う曲というのがありますね。積極的に聴きたくなる曲と、すぐ止めてしまう曲。アーテイストは、どちらも真剣にレコーデイングしているのは間違いないでしょう。曲に入り込む前は、まず音を聴いていますから、ユニットの性格と曲の相性が大きく、始めに出てくる音質が気持ちに入ってくるかどうかが重要です。私は、中域の密度が高いと、美味しく感じます。

何を聴くかで、こうも印象が変わるものなのか・・面白いけど、こりゃ不確かだな・・。クラシックが好きになったのは、偶然気持ちよく響く楽曲を聴いたということだろう。いつも気持ちが揺れ動くので、リファレンス用の楽曲を決めておくのは必要なことの様ですね。でもね、姉妹のスピード感ある音質には納得です。

とてもL23姉妹と姿が似ているユニットがあります。高価でなかなか入手しにくいユニットのSchultz KSP 130Kと20cmのユニットです。この二機種はイコライザーが内蔵され非常にフラットな特性を持ち、モニター用途向けに製造されていました。今でも大人気のユニットですね。ASHIDAVOX・20cmと同じように、一度は手にしたいユニットです。Schultzはブランド名で、メーカーは東ドイツのVEBということです。L23シリーズのメーカーはRFTです。VEBもRFTも独立した会社組織ではなく、東ドイツ内の技術を持つ企業の集合体です。トヨタや日産・ホンダなどが集まって、一台の車を製造するみたいな感じです。そういえば昔の話ですが、アルファロメオとランチアそれにフィアット、さらにサーブが同じシャーシフレームでそれぞれ車を作っていました、アルファロメオ164の撮影を行いカタログをデザインしました。でもクルマはランチア・テーマワゴンに乗っていました。

Schultz KSP130KとL23シリーズは、同じ遺伝子を持つ異母兄弟のような関係ですが、フレームは流用と思えるほど似ています。Schultz KSP130の内蔵イコライザーを外してフェライト磁石に交換しエッジを変えたのがL23シリーズということになるだろうか。・・・共通なのはコーンとサブコーンだけか?

世界大戦後、西と東に分断された時、地理的な都合なのかTelefunkenやSiemensのメンバーも西と東に分断されました。その分断された人たちが、別々の国でスピーカーの開発製造を行っていました。ともに素晴らしい音を作り出しました。東ドイツでは、スピーカーは生活必需品ではなく贅沢品として扱われ、値段も高価だったようです。配給される備品ではなかったということでしょうか。

このL23姉妹は、少し大きめの箱に入れてバスレフ追加がピッタリかも。70年代に入ってからのユニットですから、バスレフの使用は設計段階で考慮に入っていたでしょう。箱入り娘のL2302は、箱の強度不足により、性能を発揮できず雑音がかなり含まれます。70年代のユニットですから、ヴィンテージではなく、現代のユニットのような対応が必要そうです。だったら容量を今より多めにして、強度を持った箱にしてバスレフをつけてみようか。

L2322を平面バッフルで試してみた。・・一瞬で引き込まれる世界観。10インチのような低域は出ませんが、これで十分です。解像度が非常に高く、濃厚な音楽を楽しめます。ボワンとしないシャープな質感ある低域が得られます。13cm箱より大きな空気と後面解放でエッジが拘束されずストロークを使っている感じです。ここまで印象が変化するとは思っていませんでした。これなら大きな箱は要りません。今はSachsenwerk 19/4m 13cmフルレンジをトゥイータとして使用していますから、同じサイズのユニットが並ぶ風情は、少し変ではありますが。しかし、これでオーケストラも楽しめます。Beatlesも、これまた旨し。

   Melody Gardot  「Worrisome Heart」