Philips 4923851 10inch 励磁

 

 

 

8inch励磁ユニットと

1950年代? オランダ製

何を追いかけてヴィンテージ・スピーカーを集め続けるのか。気に入った良い音はすでに手にしたのだから、もう買わなくて良いじゃないか。そうは思うのですが、気がつくと行きつけのマーケットを覗いています。eBayだったりヤフオクだったり、どこかのお店サイトをウロウロ。それがめっぽう楽しくやめられない。

今年の冬だったか、eBayでPhilipsの10inchユニットを見かけた。励磁だったこともあり欲しくなりました。これまでPhilipsの10inchは聴いたことがありません。期待が大きかったのですが、失念し気がついた時にはeBayは終了していました。またやってしまった・・・残念。悔しいなあ。
ところが、最近になって、同じユニットがヤフオクに出ているではないですか。ちょっと驚きましたが、これも何かの縁です。ということでPhilips4923851 励磁10inchを落札させていただきました。

届いて早速、10inch用のアクリル・サブバッフルにユニットを取り付けます。フレームには取り付け穴がないのでPhilips純正の固定金具を使用するのですが、少し長く、わずか数ミリほどバッフルリングに干渉します。仕方なく、今回は大きな特殊ワッシャーで四か所を固定することにします。ペアで平面バッフルに取り付ければ良いのですが、実は少しでも早く音を聴きたくて、今まで聴いていたRullitの片側を残したまま一本だけ先に聴いてしまいました。Rullit + Philips という組み合わせです。
実は驚きがありました。この組み合わせで聴くと、Philipsの中域と広域はRullitの半分ほどの音量に聴こえます。しかし低域は、Rullitより更なる厚みを持った低域が少し多めに出ています。出力音域のバランスの違い、ということでしょうか。Rullitで充分な低域が出ていると思っていましたが・・・
えっ、こんなにバランスが悪いユニットをあのPhilipsが作ったの? これウーファー? と、かなりガッカリです。これまで持っていたPhilipsの企業イメージが、ガラガラと崩れてしまいました。
でも、ペアで聴かないで判断するのは早急だなと思い、残った片方もサブバッフルにマウントし、今度はペアの状態で聴き始めました。

印象は、Rullitとの組み合わせで聴いた感じがそのままです。今回は失敗したなと後悔。とりあえず食事でもして、その間エージングすることにしました。
約1時間半後、仕事場に戻り、今度はiPhonではなくLuminでPhilips 4923851を聴き始めました。
あれ、バランスが悪い感じがありません。どうやらRullitに慣れた耳が1時間半の間にキャンセルされたようで、いつもより若干優しい感じで、実に悠々と鳴っているではないですか。なんだか非常に好ましい感じです。というか追い求めていた音はコノような感じではないかと思い始めました。
若干高域が不足気味です。Rullitでは使用しないでいたトゥイーターをつなげてみると、これがかなり効果的で、まさに理想とする音? このPhilips4923851 にサブウーファーは不要です。

Rullitはバランスよく素晴らしい音だと感じていますが、Philipsのようなバランスもアリなんだと教えられました。これを個性というのか、メーカーの考え方の違いというのか。スピーカーという同じ機能のモノを色々なメーカーが作りますが、随分音色が違います。優劣付け難いデザイン競合も多いし、材質も作り方にも大きな差があり、その魅力も千差万別です。これ最高!って思うユニットに出会い、でもさらに色っぽいユニットがあるんじゃないかと、まるでナンパ師のような気分で、一度入ったら足を抜くのが難しい深い沼です。

トゥイーターは、TESLA 2AN 633 20です。Blue Flame/Red nippleなどと組み合わせようと購入しましたが能率が全く合わず使えませんでした。しかし今回は組み合わせることができます。ムンドルフ3.90μのコンデンサーを入れています。バッフルに取り付けたまま、ずっと鳴らすことがなかったTESLA 2AN 633 20にこれほどの能力があったのかと、今更ながら驚いています。実はこれ、デザインが気に入り買いました。

しかしながら、もう少し高域があったら理想の音になるのかも。
試しにこのブログで前に登場したSachsenwerkの13cmを繋げてみると、 TEALAよりさらに高域が補完されます。そして甘めの中域に少しイキイキ感が出てきます。能率がフィットしている感じ。フルレンジでSachsenwerk13cmを追加しても良いのかも。ああ、この組み合わせかな。これをするには、一度平面バッフルをバラし13cmのユニットが取り付けられるようトゥイーター・ベースの交換が必要になります。これは過去に作ってあります。少し落ち着いたら交換することにして、TESLAでしばらく行きます。


8inchと10inchの比較では、10inchでコーン面積が約50%ほど大きくなります。6.5inchと8inchでも同じ割合です。この面積の違いが、直に音に反映してきます。6.5inchと8inchの比較では、これほどの差は感じられません。また、8inchまではセンターダンパーでしたが、この10inchではフェノリック・スパイダーが採用されています。8inchと10inchの音の違いは、この構造の違いも影響があるのでしょう。さらに大きい12inchが気になるところですが、あまり市場に出てくることは無いかも。
励磁コイルは、8inchと比較すると大分サイズが大きくて、eBayで見かけた大きな励磁コイルの8inchと同じなのかも知れません。直接比較できないので断言はできませんが、バランス的にはそのように見えます。コーン紙は8inchと同じ質に見えます。非常に好きな色合いです。カッコイイですね、このディフーザーが付くデザインは。いかにも良い音が出そうな感じですし、ずっとこのデザインに執着してきました。

平面バッフルをデザインしてから、50本弱のヴィンテージ・ユニットを集めてきました。でも理想の音を探し続けています。少し物足りなかったり、あるいは性能を発揮できる環境でないため本来の音を聴けない、などといった理由です。Rullit Lab8は、理想的な音ですが、あまりに繊細な構造により少し大きめの音量で、修理後もヴォイスコイルのスレが出ることがあります。滅多に無いのですが、最近になりこの病が再発しています。それでも理想の音だと考えていますし、今も満足しています。
ですが、今回のPhilips4923851 励磁は、鷹揚な世界観でRullitより雄大な音空間を作ってくれ、低域もRullitを超える深さです。ただ広域はRullitには敵いません。どうしてもトゥイーターが必要になります。でも、このユニットは最高かも・・・・

 

 

 

デュオ・ディ・バッソの「プログレッシブ・デュオ」をPhilips4923851で堪能。広い音域がないと楽しめないアルバムで今回のユニットと相性が良いです。いつも新しいユニットを入手すると、このアルバムを聴きます。