FEHO GPm393

 

 

 

1941・43年 ドイツ製

 

ヤフオクでどうしても落札したかったユニットがありました。誰も入札していないので、自分が落札できると思い込み、そのまま時間が過ぎるのを待っていました。しかし確か100円違いで、どなたかに落札されてしまいました。そのユニットはFEHOというメーカーの8吋ユニットでした。その風情に心惹かれたのです。なぜか、その姿が忘れられずeBayを彷徨う事になりました。チャンスは半年後ぐらいに訪れ、eBayにFEHOが登場。念願かなって入手することができました。eBayには1939年製と書かれていたFEHO GPm393がそれです。

1939年といえば、ドイツがポーランドに侵攻し第二次世界対戦が始まった年です。同じ年ソビエト連邦もポーランドに侵攻。今のロシアになっても当時と同じDNAが息づいています。そして、なんとシャーシにはドイツ軍の鷲のマークが入った小さなシールまで貼ってあり、ヒトラーの声を流していたのかなと連想させます。軍が配給したラジオに入っていたのかも知れません。果たしてどんなデザインだったか興味津々。
そのような背景ですのでSiemensやTelefunkenに求めるような音質は求めていませんでしたが、それでも心の片隅には、もしかしたら絶品かもという期待もあり、ドイツから送られてくるのが待ち遠しかった。

届いた国際便のパッケージを開け、GPm393をじっくり観察。少しコーンが緩い感じで歪んでいます。湿度の違いが原因かもですが、eBayの写真はこの状態ではありませんでした。錦糸線のコーンへの固定方法で、ハトメを使用したものに、このようなコーンの歪みは良く見られます。そしてヤフオクでは付属しなかったトランス付きです。線がカットされトランスは生きていません。おまけに錦糸線も途中で切れており、これは少し厄介です。さらに、いざバッフルに取り付けようとしたら、なんと取り付け穴が90度にクロスしておらず既存の穴が使えません。仕方なくポリカーポの円盤バッフルに専用の穴を空けて固定しました。互換性がない変な仕様です。現在は固定具を作りましたので、新規の穴空けはしないで済みます。
マグネットは、よく見かけるNT3。ブルーの色が印象的で、好ましい感じです。当時は二ヶ所の工場でしかマグネットの製造が行われていなかったと何かで読んだ記憶があります。中身は同じでブランドが違うだけとか。それにフェノリックスパイダーが組み合わされ、お決まりのフィクスドエッジです。
シャーシを見ていくと、アレこの数字は41.4?、そしてもう片方は43の数字が読み取れます。これ製造年かもしれません。どうも、1939年製は嘘のようです。欧州の方たちにとって1939年は忘れられない年号なんでしょうね。だから嘘を書いちゃった・・・ でも1941年はソビエトと独の戦いが始まった年ですね。43年もまだ大戦中。いずれにしても、とんでもない時期の製造です。

FEHO社は、1935年に設立されたライプツィヒのスピーカーメーカーで、Siemensのように巨大な企業ではありませんが、優秀なユニットを数多く世に出した企業です。最後は1972年にHECO社に売却されてしまいます。調べてもあまり資料が出てきませんが、積極的にスピーカーを開発製造販売していたようです。いくつか面白い画像も出てきましたが著作権がありますのでURLだけ残しておきます。
https://radio-bastler.de/forum/showthread.php?tid=19126

少し驚いています。あまり音質は期待していませんでしたが、直前まで聴いていたSiemens 6 Ruf.Isp.22c より低域が出ています。どうせ低域はダメだろうと思っていましたが、ヴィンテージ用にチューニングしたアンプとうまくマッチしています。これは予想外の展開です。実は、このFEHOは以前購入して少し聴いた後、しばらく寝かせていました。その時の印象は、寝ぼけた感じの印象でした。こんなモンか、という感じ。オープン・バッフルも最初の試作一号機でしたし、アンプもヴィンテージ・マッチング以前のバージョンでした。今回改めて試聴して、印象がガラッと変わりました。ヴィンテージを聴き始めた時の環境は、ユニットの能力を引き出せないでいたという事でしょう。平面バッフルもアンプも、ヴィンテージ・スピーカーの美味しさを知らなかった。全部のユニットを聴き直してみないといけません。しばらく寝ているユニットも多いので、これは楽しみです。
ただ、高域はもの足りません。ツイーターが必要です。現在はTESLAの3吋を使っていますが、能率が合わない感じで、音楽の生命感が薄くなっています。別のツイーター・ユニットに交換して高域のバランスが取れると、このユニットはなかなか優れものです。スパイスを少し加えたら、美味になりそうな予感が。

と、ここまで書いて、FEHOが身売りしたHECOのツイーターがあるのを思い出しました。これはメーカーも分からずということで、お安く入手でき、後で調べたらHECO製ということが判明しました。ベージュの樹脂製で、かなりチープな感じ。こちらは4吋になります。こちらの方が TESLA 3吋より良いです。でもコンデンサーを交換した方が良さそうです。これにはオープンバッフルをバラす必要がありますので、少し先送りです。試作三号機からコンデンサーを内蔵式に変えています。やはりコンデンサーは外に出しておいた方が便利です。