励磁型 Philips 8inch

 

 

 

 

1939年、1940年、オランダ製

 

前回のPhilipsと同じデザインの励磁型に出会ってしまいました。小さなアルニコ仕様で十分満足なんですが、励磁だとどんな音になるか知りたくてeBayで購入。・・・病気かな? ブルガリアから厳重な発泡スチロールのお手製箱に入って届きました。今回は、スピーディーに送っていただけて、早い到着でした。ウクライナ戦争の影響が心配でしたが、影響は無かったようです。ちなみに、ウクライナにはロシアのユニットが沢山あるとか。

実は同時に、違う構造の励磁PhilipsがeBayに二種類出ちゃいました。コーンやディフューザーは、大好きなあのデザインで一緒ですが、励磁部分が大いに違います。購入したのは、小さめのコイルの方です。こちらの方がお手軽価格で、デザインが好きでした。購入しなかった方のユニットは、下のようなデザインになっています。コチラは四角いヨークが普通に剥き出しになっています。購入した方は、このヨーク部分をデザインしています。このようなデザインの場合、多くはヨーク外側に円筒形のカバーを取り付けてコイルを見えなくしますが、これは違います。このヨークのデザインはとても秀逸です。(イメージはeBayから拝借させていただきました。)アルニコ仕様とチコナル仕様の二種類のマグネットがありましたが、まさか励磁型にも2タイプあるとは。しかも戦時下で。

                        購入した励磁Philips  8″                                           見送った励磁Phlips 8″ 普通の励磁に見えます

見た感じが、随分違いますね。購入した方は下手するとチコナルに見えます。見送った方は、1本で購入ユニット・ペアより高価な価格でした。この二つはよく見るとシャーシが違います。アルニコとチコナル、磁石に大小の違いがありましたが音質はほぼ近い感じなので、大きい励磁には非常に興味がありましたが、諦めました。
購入ユニットは、1939年・1940年の製造で、もちろんオランダ国内の製造です。ヒトラーが戦争を始めた年の製造です。少し気になる錆の状態は、これ進行しそうです。前の持ち主は、ヤスリをかけて錆を落とそうとしていましたが、ヴォイスコイルに入るとマズイので途中でやめてくれて正解でした。鉄の彫刻と同じようにワックスで錆の進行を止める予定です。少し黒くなります。通電はOKでしたので、励磁コイルを二日間かけてゆっくりエージングしました。60Vで結構温まってくるようですので、60Vで聴き始めることにします。・・・・・ああ、いつものPhilipsの音が聴こえてきます。良い感じ。

見慣れたデザインですが、裏側のシャーシは少し印象が変わります。アルニコと同じ径の丸穴が六箇所開いています。穴の直径は、励磁もアルニコも同じφ55mm。ただしアルニコの方には丸穴の間にプレスラインが入ります。これは剛性が高くなりますね。何回に分けてプレスするのか分かりませんが、最初にこの凹みを付けるでしょう。このプレスラインは、丸穴が変形仕様になると消滅します。
また、励磁コイルのトップに取り付く三角形のプレートも、この後に続く新しいデザインに引き継がれていきます。このユニットが、AD9710まで続くデザインのベースのように感じます。しかし、型番がどこにも入っていません。ヨークのサイド面に紙に印刷したラベルで、R 1587というナンバーが入っています。もう片方のユニットはR 1387です。後ろの二桁は同じです。励磁のシリアル? だったら印刷はしないですね。製造場所でしょうか?? あるいは製造ラインか??
片方のユニットは、エッジにダメージがあります。割れが出ています。このままストレスかけないで聴くか、補修するか、どうしようか迷います。ちなみに、重さは1.7キロで、結構重いですが励磁コイルの重さです。

励磁コイル:1150Ω  ヴォイスコイル:4.3Ω

コーン紙は、アルニコ仕様と違いフカフカした感じがします。アルニコ用コーン紙の表面にある凹凸パターンがないからでしょうか。しかし、裏からコーン紙に柔らかく触れるとそれだけで音がでます。かなり入力に対してセンシティブな感じです。当然、音楽に反映するでしょう。ちなみにコーン紙の裏側には凹凸の小さな模様が入ります。少しRFTのコーン紙に質感が似ています。普通、励磁コイルには紙などが巻いてありますが、このコイルには何やら布のような織り目がある素材がキッチリ巻かれ塗装されています。このコイルからは、高性能を感じますし、非常にオリジナル性が高いです。また、ヴォイスコイルは上で露出するギリギリの位置まで巻いてあります。この励磁スピーカーは、アルニコ・タイプと同時並行で製造されていたようです。なぜでしょうね? 今回、Philipsスピーカーの、一つの源流に出会えたように思います。

Philipsは企業として、自社の音質を決めていたのかと思われます。徹底した管理も行っていたようで、アルニコでも、励磁でも同じ世界観の音が出ています。Philipsは世界にオーディオを配給する大企業ですから統制を取らないハズはありません。励磁特有の、ハジケるような音を想像していましたが、ゆったりとした世界に終始します。いつ頃からこの音を自社の音にしたのか・・・興味は尽きません。
                                                                                                       

豊かな歌声は、このスピーカーの得意な表現です。声がとても良いです。リッチな音です。しかし現代のアコースティックもなかなか聴かせてくれます。このスピーカー、はるか彼方の時代に製造されていますが、デザインは決して古くなく今でもオーラを発していて、説得力があります。実は、最初に聴いたのはこのアルバムでしたが、一瞬で魅了されました。しっかりしたベースは音楽の魅力を作ります。「アズール」でヒットした「天野清継」のアルバム「Maskinfabrik」です。カバー・デザインも良いですね。