励磁という響きに惹かれてAtelier Rullit 8inch

   2020年 Atelie Rullit製  

以前から楽しみにしているブログがあります。影響力が大きく、無意識にそこで良さそうに感じたユニットを探してきました。無意識です。いかに洗脳度が高かったか。「超入門:真空管ラジオ これ」というブログ。主は、ニアフィールドでスピーカーを聴いておられます。そこで、とびきり美人に見えたユニットがありました。それがAtelier Rullit製の8inchユニットです。
以前からeBayで、この方Oleg Rullitさんが製作するユニットを見つけ、いつかは購入しようと決めていました。励磁は大変そうなのでアルニコが良いなと。でも励磁のほうがオーラが強い。Pinterestでも度々目にする美しく繊細なユニットです。それを購入し聴いておられる方が、上記のブログの主です。
最近、なぜかeBayで見ることが出来なくなったAtelie Rullit。もう入手は難しいなと諦めていましたが、ありがたいことにブログ主の「廃人」さんから譲っていただけることになり、いま手元にあります。

励磁でヴィンテージ・スピーカーを楽しんでおられる友人が何人かおります。じつは、密かに励磁に憧れていました。でも電気的な知識に欠落があるので、見ても見ないふりをしていました。
励磁。フィールドコイルと呼ぶより何倍も重みがあります。

Atelier Rullitを営むRuliitさんは、おそらくドイツで気に入った同型のヴィンテージ・スピーカーを数多くストックされて、自分の美意識にしたがってRullitオリジナルを生み出しておられる有名な個人ビルダーです。これ、ストックの部分は、あくまでも推測です。なんだか理想的な生き方の様に映ります。世界でも珍しい活動ではないでしょうか。ただ良い音が出るだけでなく、美しいスピーカーというのが重要です。音が出なくても、1日中眺めていられるデザイン。いつかやってみたいと考えていたスピーカー作り。リビルドやレストアではなくRullitさんの仕事はクリエイトです。しかし、このスピーカー、ヴィンテージと呼べるのか?

実は、まだ励磁電源がありません。友人に相談し、そんなに好きなユニットだったら真空管の方が良いんじゃないの。悪魔のささやき。岡山で医師をされているKさんは、オイロパ用の励磁電源を自作され、ご自分の音の世界を追求されています。いつぞや真空管が光るオープン・バッフルを作りたいんだと話をしたところ、キセノンガス内封の整流管をプレゼントしていただきました。3B22。これは絶対に励磁対応のオープン・バッフルを作らないといかんぞ。ということで、また一つ目標ができました。これが、そのイメージです。しかし、まだ勉強不足で励磁電源など自作できません。ですから、今回はスイッチングで行こうと思います。

Rullitさんの美意識は、量産ユニットでは難しいハンドメイドならではの、繊細で丁寧な仕上がりを見せてくれます。オリジナルでないのは、シャーシとNOS 2.7gのコーン紙、それにAERO 0.7gの 8Ωボイスコイル。別のシリーズではコーン紙も和紙を利用してハンドメイドされているのを見かけます。日本でも、美濃和紙を使ったASHIDAVOXが人気ですが、趣は随分違います。別機種ですが、エッジを鹿革にすることで、金型を使用せずコーンのハンドメイドができるのでしょう。ビク抜きの型でしたらコストも低く抑えられます。また、治具を作り、コーンを手でカットもできます。ああ、面白そうだ。
こんなに格好が良い後ろ姿は滅多に無いでしょう。とにかくディティールをご覧ください。

   

ボイスコイルの先端の加工を見て、Rullitさん、あまり旋盤がうまく無いなと思いましたが、違いますね。わざと旋盤の回転を偏心させて切削でラインを出しセンターに出臍を作ったのかなと思うようになりました。ボイスコイルキャップが無いので、そのくらいの事はするでしょう。サブコーンはコンーンに接着ではなく、ボイスコイルの方まで伸びています。撮影中、ライトの向きでサブコーンが光り始め、なんとも美しい光景が。Rullitさんも光りにかざしたりしながら、製作を楽しんだでしょう。また、錦糸線のこのような扱い方は初めて見ました。工芸の世界ですね。センスが光ります。励磁電源用のプレートは木製でマイナスネジで固定。好きです。ユニットに木を使用するのも初めて見ました。錦糸線で使われる鮮やかなグリーンと、ニス塗りの茶色、それに銅線の色が、シャーシのハンマートーンらしきシルバーと非常にマッチしています。布で機体を製作した複葉機みたいな感じがします。緊張感とオーラがたまりません。

教えていただいている仕様を記しておきます。
1. 1950年代前半のドイツ製 NOS 2.7gコーン紙を使用
2. 古いドイツの銅線で巻かれた Super AERO 0.7gの 8Ωボイスコイルを使用
3. Rullit オリジナル AERO 0.3g Whizzers
4. Rullit オリジナル 1KΩ 0〜120V フィールドコイル
5. Rullit オリジナル 鹿革のエッジ
6. Rullit オリジナル フェノール蝶ダンパー

まだ音が出せていませんので、今回はこのくらいにしておきます。
大切な娘さんを嫁に出していただき「超入門:真空管ラジオ これ」のSさん、ありがとうございました。

今回の撮影レンズは、Distagon50mm。もう40年近く使っている愛用のレンズです。

オイロパの励磁電源製作の楽しいブログは、 https://tkeuropa6.exblog.jp/25780773/