Siemens 6 Ruf. Isp. 22c

 

 

 

1950年代 西ドイツ製造

 

Klangfilmデュオフォンのツイーターに採用されているのが、Siemens製のKI.L205です。音響レンズの後ろ側に2台縦並びに配置され、デュオフォンにはオイロダインなどにあるホーンが無いので雰囲気が違います。むしろ普通に見える後ろ姿です。このユニットはよく見ると、以前から気になっていた6Ruf.Isp.22c と酷似しています。ハンマートーンのシルバーで塗装されKlangfilmのシールにより、KI.L205からは有難いオーラが出ていますが、シャーシの塗装を剥がしたら22cと同じようです。音響レンズの後ろ側でコーンは見えず表面の状態は確認できませんが、しかし基本は22cですので、このユニットには大きな期待を抱いてしまいます。汎用のユニットを塗装してライトチューンを行いデュオフォンに使用してしまうSiemensのセンスが良い感じです。消火器用のポンプ・エンジンを搭載しちゃったロータス・エリートを思い出しますが、発想が良いな。

なぜこのユニットが気になっていたかと言えば、それはシャーシのデザインにあります。このユニットのデザインはSiemensの中で最も簡素な作りに思えたからです。飾り気無しで、フレームに強度を出すためのプレスも無く、外形の円カーブに沿った三次元形状が、唯一の補強。シャーシの終端で直線に折られたフランジはプレートに固定され、ここにVACマグネットが取り付けられる22cですが、カシメで固定するのはKI.L205も同じです。このデザインなら金型もプレス工程も減らし製造をコストダウンできたでしょう。とにかく部品点数が最小限で、これも業務目的を狙った結果でしょうか。
フレームを大胆にカットした形状は、お尻のカタチにも見えて愛嬌があります。レッドニップルもそうですが、Siemensは人間のカタチを意識的にデザインして用いているのだろうか。



 数十年分のホコリはあえてそのまま撮影。ダンパーのホコリもかなりの量でしたが音には影響無いみたい。

デュオフォンは大きな音量で使用するのが本来ですが、低域を頑張らないKI.L205はこれで十分な強度なんでしょう。デュオフォンはダンスができるホールのような場所で、音楽を流すような使い方をすると聞いています。大型ラジオなんて単語も聞こえてきます。ダンスには文化を感じます。
以前聴いた広いスペースで鳴るモノラルのデュオフォンは、素晴らしい感じで歌っていました。オイロダインに繋がる音質があります。私は、むしろデュオフォンの音質が好きでした。ホールなどでの使用がフィットするでしょうが、大きめの視聴スペースをお持ちの方でしたら、デュオフォンの個性を活かすことができるでしょう。まあ、私の部屋では無理ですが。

早速平面バッフルに取り付けて聴いてみます。ずっと寝ていたユニットではなく、使われていたユニットのようでしたので、エージングもせず普通の音量で聞き始めました。が、あっけなくスルッと良い音が出ます。ツイーターに使用されたぐらいですから高域も良い感じで広がりがありますし、低域も音楽的満足が享受できる美味しい音です。これが多くの方から愛される所以ですね。Rullitから入れ替えても違和感がありません。いとも簡単に良い音環境が作れてしまいます。下から上まで弾けるように音が出るスペックがとても有難く感じられます。レッドニップルでは持て余してしまう部屋であっても、22Cでしたら美味しい部分を楽しむことができるでしょう。それに価格も比較的リーズナブルなのが嬉しいです。デュオフォンから出てくる音とは別世界の音で楽しませてくれます。残念ながらデュオフォンとの血縁関係は感じさせてくれません。

デュオフォン以外にも、Klangfilmはこのユニットだけで小型後面解放箱を作ったり、可搬型のシネ用スピーカー・システムなども製造しています。バランスがよく声の再生など気持ち良く、現代の音楽にもフィットします。ヨーロッパの世界観満載の、業務で使えてしまう8吋傑作フルレンジ・ユニットの一つでしょう。バスレフ以前のユニットには、なにか惹かれるものが多くあります。