無帰還マッチング・アンプその後

 

 

 

 

 

 

私の平面バッフル構想の中で、音作りの要が、この無帰還マッチング・アンプです。
毎日気持ちよく音楽を楽しんでいるのは、このマッチング・アンプの音を楽しんでいるとも言えます。ヴィンテージユニットの音の違いは、ユニットの個性だったり仕様だったりします。時間経過で変化する音というのもあります。いずれにしても、アンプが良ければ、気持ちよく音楽が楽しめます。

今回は、やっと一台だけですがアンプとしてまとまりましたので、レポートしようと思います。初代のセンターに四角い穴があるデザインのマッチング・アンプと同様、基板などは相島技研仕様で、音は保証されています。このアンプの特徴は、音質を堅持しつつ、MMカートリッジでレコードを楽しむことができることです。また、ヴィンテージ・マッチングを外し通常のアンプとしての機能もあります。そのほか、ヘッドフォンが高音質で楽しめたり、プラス3台、RCA経由でプレーヤーの増設が可能になっています。

このアンプ、ここまでたどり着くのに構想から4年もかかってしまいました。
無垢材を使うことをテーマにしたことが、ここまで時間がかかってしまった原因です。要は無垢板の歪みとの戦いの時間とも言えます。方法を変えて何度作り直しても、結局は歪みが出てしまい先に進むことができなくなりました。湿度の高い時期の製作を止めていたのも、時間がかかった原因です。年の半分は作業ができません。合板仕様でデザインも考えましたが、「これ欲しくないな」が結論で、また無垢材に戻りました。
合板で作ることを考えていた時に、「歪みを抑えるには、歪み止めの治具を使う」という話を耳にしました。なるほどと思い早速デザインをやり直し、歪みが出て困っている天板に、歪み止めを装着してみました。結果、少し出ていた歪みを矯正することに成功。やっと目処が立った感じです。
そこから、もう一度作り直しが始まり、やっとこさ一台形になった次第です。
ただ、この歪みどめに基盤が取り付き熱を発しますので、今後を観察しないといけません。特に、板を合わせて作る天板が心配になります。こればかりは試してみるしかありません。しかし、もし板が割れて裂け目が出たら、これは景色として楽しめる材を使っているので別の楽しみがあります。

以前作って納得していた、真空管とICのハイブリッド・アンプと聴き比べると、このマッチング・アンプはずいぶん豊かな音質になっています。そしてノイズがゼロです。これも美点です。あらためて、このマッチング・アンプの良さに魅了されます。これは、ヴィンテージ・スピーカーとアンプをつないで耳で確認しながら、アンプの音を育てたことが成功のカギです。

現代に至るまで、ICアンプは特性第一主義で開発されてきました。アンプの負荷を純抵抗で開発されたアンプは、スピーカーを置き去りにしてきたので、スピーカーと対話を重ねながら熟成されたアンプには遠く及びません。音質の良さを数値化できないので、開発の現場では、連続サイン波を入力して、純抵抗を出力につなぎ特性を測定しながら開発を進めます。
スピーカーという、複雑な要素の負荷をドライブするには、静特性では分からない特性を持つアンプが必要だということです。また、常識を覆しトランスを採用したことが、このアンプの良質な音に貢献しています。このアンプの特徴は、ICアンプを使わず最低個数のトランジスタを使用して音を作っていることです。これまでの物量投入で構成されるアンプではなかなか聴けない伸びやかで豊かな音が魅力です。(オーデイオ好学 NHラボ株式会社刊 良い音のアンプとは・・相島昭敏 一部抜粋要約)