真空管で味変

 

 

 

Azis  S2 series

 

 

うなぎの季節が、もうじきやってきます。「ひつまぶし」が好物ですが、名古屋で食べた「ひつまぶし」は、最後に残ったご飯にお茶をかけてうなぎ茶漬けにして食します。これが絶品で、時々また食べたくなるのです。

もう15年以上前にデザインした真空管アンプがあります。Azisブランドで販売していたS2シリーズです。S1アンプの低域不足を補うため、プリに真空管を入れるコンセプトでデザインしていました。実は、今も多くの時間をこのアンプで音楽を聴きながら仕事をしています。ヴィンテージ・スピーカーよりこちらの方が稼働率が高いくらいです。S2は真空管アンプがデスクの上に作る小さな音場の中で、好きな音楽に浸るためのオーデイオです。サイズも小さくモニターの周りで、さりげなくも濃厚な音環境を作ってくれます。

そのS2アンプの真空管を、TESLA製の真空管に変えて聴いてみませんかと、甘い囁きをくれたのが、最近、色々お世話になっているデザイナーの中根さんです。彼は、「調べる」ということにも才能があり、色々知らない情報をもたらしてくれます。今回はTESLAで味変を味わってみませんか、がお誘いでした。この話を聞いて、すぐ思ったのが、名古屋「いば昇」の「ひつまぶし」でした。残ったひつまぶしにお茶を注いだだけで世界が変わってしまう。あれ良かったな・・S2アンプの味変か、美味いかも。

思いも寄らぬほど大きく変化した音に驚きました。低域不足改善のために作ったS2アンプでしたが、真空管でここまで音が変わるのか・・・。当時欲しかった音がそこにありました。Telefunken真空管すごいな・・・。さらに中根さんが入手していたTESLAの真空管に交換すると、低域が少し苦手だったはずのTESLA 633から、Telefunken真空管の時と同じように素晴らしい低域が飛び出してきます。しかも中域がスッキリしてスピーカーとの相性が、相当良いです。あれ、理想的な音かも・・・。 それと同時に、当時S2アンプの電気的な設計を行なっていただいた、古島一博さんは当時からこのことをご存知だったろうなと思ったりします。

真空管好きの方達の遊びに触れてしまいました。なんだか15年以上経過して、やっとS2アンプが完成した感があります。でも、当時この真空管を知っていても、製品に組み込むのは無理だったでしょう。高い価格と数が揃うかの問題です。しかしユーザーに向けて、真空管の遊び方を共有することはできたハズです。

この世界観の変化は、平面バッフルでヴィンテージユニットを交換して遊ぶのと同種だなと思うのですが、これが出来ない半導体アンプは呪縛が大きいかなとも思うのです。今回の真空管味変で、なんというか、アンプの概念が変わってしまいます。真空管アンプ、面白いな。

どう良かったのか。・・Telefunken真空管では、トリオの演奏で、三台の楽器が独立してステージ上にあり、それぞれの音量が実際と同じ感じでバランスしています。トリオはビル・エヴァンスでしたが、ピアノとドラム、そしてスコット・ラファロのウッドベースが定位置にあり、実にバランスした音量でライブ感があります。TelefunkenもTESLAもバランスは近い感じでしたが、音質に違いが出ています。あとは好みで決まりそうですが、Telefunkenの方が太い音が出ています。クラシックならTESLAが良いか??
ところが元の真空管では、中域が強くウッドベースが後に下がって聴こえます、明らかにステージが見えにくく、ライブな感じが薄くなり、音が団子状態に近くなります。当初使用していた真空管は、SYLVANIAとプリントされた、Made in USAの製品ですが、中国製という話も聞いたことがありました。もし割れても再入手がしやすいことでSYLVANIAを選択したと思います。いまだにTelefunkenが人気なのも、これでうなづけます。

そうか、真空管で、こんなに世界観が違うのか・・ 恐るべしヴィンテージ真空管。平面バッフルで、あまり出来が良くない20センチを聴いて、ジーメンスに交換したら、あらまあと感激するのと同じです。遊びが二乗されてしまい、これは果てしない遊びだなと遠い目に。

大昔、子供の頃の趣味はギターでしたが、安いレコードプレーヤーから流れる音をなん度も聴いて演奏をコピーしたものです。しかしベースの音が取れないんです。うんと向こうにベースがいましたから聴きたくても聴こえません。それでかなり苦労してコピーするのですが、いまだに若い頃の目標だったアビーロードの完全コピーができていませんし、今ではなんだかもう忘れてかけています。もしTelefunkenの真空管があの当時刺さっていたら、もしかしたら、子供の頃に夢見たギターリストになっていたのかも・・・無理か・・

愛車のカニ目は、オリジナル・エンジンのメンテナンスパーツが無く、ほぼ同じ排気量のMGエンジンに載せ替えています。少しトルク感が出て、運転しやすくなりましたが、ミッションは、モーリス・マイナーのミッションに載せ替えていて、どうもギアレシオがうまくないんです。これもオリジナルのミッションパーツが入手できません。ギア比が低すぎてエンジンの美味しさが味わいきれないでいます。クルマの味変・・
ハッセルブラッドでは、シリーズ化されたレンズを使うので、デジタルバックとも相性が良く、大体思うような撮影ができていますが、ライカは違います。ライカレンズが高価で、サードパーティーのレンズが大量にあり、優秀なレンズからそうでもないレンズまで色々出回っています。そしてボディーがデジタルになってくると写りも大きく変化してきます。よりレンズの特性が出てくるようになります。せっかくライカなんだから、ライカレンズを使うのが良いのでしょうが、CONTAXとViogtlanderが混在しています。これも味変です。どちらも美味ですが、何年使ってもライカはしっくり来ません、というか上達しないのでしょう。ハッセルにはコレが無いので、もう50年以上使い続けられるんですね。

しかし、どこかで変わらない基準がないと、音の判断もできなくなります。アンプを変えるなら、スピーカーは定数として音の変化を確認しますが、両方変えてしまうと訳が分からなくなります。今回のアンプ味変はMac Studioが音源で、スピーカーは変わらずに、仕事時に使用しています。音楽用としては、無帰還トランジスタアンプをリファレンスとして使用しています。ここの部分は変えずに、これからもヴィンテージスピーカーライフを楽しもうと思います。

Telefunken真空管は、岡山の医師 / 加藤倫裕先生からいただきました。美味しい真空管、ありがとうございました。加藤先生は、確かクラングフィルムのEUROPA JUNIORを鳴らされていて、ヴィンテージ・オーデイオの知識が半端ないのですが、真空管のコレクションでも深い知識をお持ちです。真空管にこだわってしまう気持ちの片鱗が少しだけ理解できた気がします。そういえば、以前紫色に光る真空管を励磁電源用にいただいていますが、いまだにその光を見ていません・・・。