ALTEC 416-8Bでサブウーファー

 1975年発売 アメリカ製

これまでのオープン・バッフルのレポートをご覧いただき、すべて順調に進んでいるように見えると思いますが、オープン・バッフルの共通問題である低域不足は、対策をいろいろ考えてきました。正面から見える大きな透明アクリル板は、不可欠だと思い最初から設定していました。しかしこのサイズの円盤だけでは、低域不足の問題を回避することはできません。部屋の中だと大きなサイズですが、それでも低域対策には小さすぎました。

サイドを折り込んだオープン・バッフルを見かけます。それを真似て、バッフルリングと同じ径のボイド管で、リングの奥行きを延長しましたが、これは失敗。低域の具合に変化はなく、狭いトンネルに入ったようなニュアンスが加わります。定在波対策としてバッフルリングにスリット穴を開けましたが、ボイド管に穴が必要でした。紙管にキレイに穴を開けるのが難しく、これは断念。レーザーなら加工可能かもですが、焦げますね。

そこで、以前デザインしたアンプとサブウーファーのシステムをそのまま使用することに。音源は、同時期にデザインしたネットワークプレーヤーを使用しています。この組み合わせで、低域補完はうまく行きました、しばらくの間は気持ちよくヴインテージ・スピーカーを堪能。本心を言えば、サブウーファーなしで、これくらいの音を聴きたいなと思っていました。だってスピーカーの径は大きいですからね。

 

 

 

 


以前デザインしたデスクトップオーディオと

サブウーファー。     それにiPhone/iPad用スタンド

 

 

 

 

ところが能率の高い、業務用にも使用されていたSiemensのユニットを入手して、そのアンプ/サブウーファーのバランスは見事に壊れてしまいました。能率の違いから、音量バランスが取れなくなった訳です。以前と同じように低域不足問題が浮上してきました。
そこで、少しユニットサイズが大きいサブウーファーを使う事にして、FOSTEXのPM submini2を購入。80dbなので能率のバランスはあまり変わりませんが、狙い通りの低域を得られます。しかし、アンプとヴィンテージ・スピーカーとの間に何か入った感じがします。そして少しフェイク味を感じ、あまり使用しなくなりました。このサブウーファはネットワークの完成度が高く、まだ大事にストックしてあります。ヴィンテージ・スピーカーとの音質に差がありすぎたのでしょう。

低域不足を補うため、ユニット自体の低域能力が高そうなヴンテージ・スピーカーを購入してみましたが無駄な抵抗でした。回折キャンセルによる低域不足問題は、解決難度が高いテーマです。物理の原理に対峙する感じ。しかしオープン・バッフルは幅広いユニットに対応できないと面白くないですね。

この時期に、兵庫の木工・坂師匠に相談にのってもらいました。彼は、ALTEC 416-8Bを使いこなしています。常時数セットのALTEC416-8Bをストックし、巨大なエンクロージャが家の中にゴロゴロありました。大きな家は良いですね。坂師匠のお宅で堪能する、ホールにいる感覚や、脊髄まで到達する低域感は、このALTEC416-8Bが音楽の土台をしっかり支えているから成立するのでしょう。300リッターの箱を作ると20Hzあたりまでしっかり表現できます、という美味な話に刺激され、さっそく能率が高くf0も低いALTEC 416-8Bを購入。

わたしの環境では、300リットルの箱は無理です。ALTECが部屋の主になります。天井までの箱にしたら床面積は小さくなると、甘いお誘いもありましたが、低域を欲張らず、後面解放の箱を試作する事にしました。近所のホームセンターで合板を購入し、隣町の服部木工師匠のところで材料をカットします。底も無いバラック作り。吸音材はカーボンを奮発。板取優先でサイズは適当です。で、早速試し聴きをしましたが、悲しい事にALTECはボイスコイルから異音が。低域の出方は良さそうですが、ガッカリ。

ここは修理するしかありません。以前からお世話になっている「YOSHIDA スピーカーリペアサービス」の代表・吉田さんに相談。頼りになる方で、ありがたい存在です。肝心の修理内容は、ボイスコイルの変形を修理し、センターの偏心を修正していただきました。約1カ月で健康体に戻った費用はリーズナブル価格で感謝。しかし、どうしてボイスコイルが変形するのだろうか?

修理が出来上がるまでの1カ月、合板に大穴があいた箱を眺めているのがイヤになり、箱にコラージュすることにしました。以前、神田で購入しておいた、ヤケて茶色に変色した大昔の英単語辞書と内容不明の変色小説。半日かけてコラージュした箱は、合板の主張が消え良い感じです。

サブウーファーのアンプは、最初と同型です。結果は、大満足。あとで足した感じやフェイク感もなく、ウッドベースの弦を感じる深い低音です。やはり38センチスピーカーは絶大な威力です。小さな音量でも、深い低域を表現できるので、非常に使いやすい。ひとまず、これで行きます。しかし、サブウーファーの追加は、オープン・バッフルの低域問題をバッフル側で解決する手段ではありませんので、これからもバツフル側のデザインによる解決を模索していきます。

しっかりした低域は音楽に感動を与えます。そして、深い低域成分には、麻薬の匂いがします。
このアルバムも、なにか麻薬的感覚が・・・「Oeter Gregson」のシングル「SOMNIA」落着きます。

YOSHIDA スピーカーリペアサービス/ https://yoshida-speaker-repair.com