でっかいゲンコツ 1

 

 

 

8インチと比較するとサイズ感が分かります
新品の様な8吋との差は劣化の歴史。

 

元旦にお年玉が届きました。この歳になるとサンタも来ないし、お年玉は自分へのエール。断捨離を始めているのにな。でも、罪悪感を抱きながらもポチッとやってしまった。お年玉は、秋頃から気になっていた10吋のゲンコツ、National  10P-W1。シリーズ3兄弟の末っ子は。6P-W1で、次男が29話のゲンコツ20P-W09。シリーズ前期はinch表記で、後期からcm表記に変わり、8吋機種名は8Pから20Pへと変化しています。8吋ゲンコツ以来、ナショナル製のスピーカーに注目しています。もしかして国産の優等生? 他のメーカーもありますが、今はナショナルから。

30年間作られていた大人気シリーズの長男は、ゲンコツがゴールドで、小さなエンブレムまでゲンコツに取り付けてナショナル・ブランドをアピールしています。ナショナルはカタカナです。当時のオーデイオは、ハイテクでしたから、先進企業のナショナルを誇りを持って発信していたんですね。8吋と比べてみると、紙のディフューザ形状が大雑把な感じでエッジの山が一つ多くストロークが大きい。8吋の紙ディフーザと同じデザインだと主張が強すぎるんでしょう。ゲンコツのサイズは同じです。ただコーンに入るプレスラインは相似形ではないようです。8Pゲンコツより音域が少し低域にシフトして、価格は8P / 3,200円に対して10Pは5,500円。販売を始めた頃は5,200円だったとか。このユニットのみで組まれたエンクロージャも販売されていて、それにはバスレフ前のARUにも見える構造を取り入れているように見えます。バスレフ前夜、テレビや自家用車が大流行する直前の時代です。

悪意あるヤフオク出品
しかし、届いた10Pゲンコツの状態は最悪だった。コーン紙全体の劣化が激しく、本来の紙の剛性や柔らかさを半ば失った状態に見える。まるでビスケットのよう。フィクスドエッジとシャーシの接着部は、当然コーンの動きでストレスが一番高くファティーグが貯まる部分であり、そこのダメージが大きい。紙の柔軟性を失ったこの部分を中心に、山に沿って周囲がほぼ分断されています。汚れたゴールドのディフューザーを軽く拭くと、コーンが何やら反応して音を出そうとします。明らかにヴォイスコイルが干渉している。そして、振動に対して敏感に反応する紙質が伺えます。要は音を出す部分が決定的なダメージを受けているという事です。電気的には通電していることは確認できましたが、すぐに音を聴ける状態ではなかった。エッジを革に置き換えるか、紙を復活させるか。Sachsenwerk以来の困ったことが起こりました。
ヤフオクの説明では、状態良好と書かれており、現状との齟齬は随分大きく、この辺りにはヤフオクの闇があります。現物を見ないで購入するリスクは本当に大きいですね。下は全周囲が割れてしまったエッジ。

エッジ部をカットしてアルカンターラに置き換えるのが最善と思われますが、未体験の大手術が必要になります。他のスピーカーでトライしてスキルをつけないと臨終ということも考えられます、いきなりはリスクが大きい。すぐに聴きたいので、今回も紙を使って修復が妥当か・・。この革を使うスキルは習得が必要なようです。
もう一つ、裏からするか、表からやるか、これも大問題。エッジはフレームの近くで分断されているので、なかなか難しい作業になりそうだ。一旦コーンをフレームから外して、裏からの補強が一番良いでしょう。しかし、このままだとエッジ部分がバラバラになってしまう。その前に弾力を失い硬化した周囲のコルクを、どう剥がすかなど、色々な技術的難問が出てきます。
もう一つ。もしヴォイスコイルに問題が出た時には、コーンを取り外しての調整が必要になりそうです。この時に、裏側の修理が雑な処理だと、少しマズイ事になりそうです。そう考えると、オモテ面から補強する方が、後で問題が起こりにくいのですが。まず、裏側から和紙と澱粉糊でそのまま補強して、強度が不足するなら、オモテ面からも補強を入れる。と言うような筋書きで復活を目指す事にしよう。こんな時プロはどうするのかな。