オープン・バッフル ツイータ交換2

中途半端になっている、Philips 4923851  10inch  励磁ユニットの高域問題を解決すべく、トゥイータを見直しています。前回交換したPhilips AD3501 MD/01は、ASHIDAVOXとの相性も良く、より良好な音環境を作ってくれました。相性が合えば、高域が良い感じのフルレンジをトゥイータとして使用するのは、ヴィンテージでは正解のようです。

Philips 4923851を軸にトライアル開始
前回の続きで、Philips 4923851と同じPhilipsのフルレンジ AD3501 MD/01・12cm  を組み合わせて、まず聴き始めます 。下は5.6μFコンデンサーでカット。バランスが悪く、やたらシャカシャカし、中域もなんだか「す」が入ったようでとても残念な音を出しています。2種類のユニットが勝手な音を流して、ハーモニーなど皆無。それぞれが自分を主張している状態です。これならトゥイータを入れない方が随分マシな感じです。

と、ここまで書いてPhilips 4923851のヴォイスコイルに問題発生。片方からスレる音が出始めました。極低域でスレが発生しますが、多くの曲では発生せずHiphop系など作られた低音成分でスレが出るようです。作った音が入らないクラシックやジャズなどではほぼ出ていません。しかし、Hiphopで好きな曲もありますし、再エージングを試してみます。ASHIDAVOXを聴き、ここしばらくはまったく励磁に電気を流してきませんでした。

でも、エージングが万能薬だとは考えていません。ヴォイスコイルのスレの原因が偏心であるなら、それは位置を修正すれば完治するでしょう。しかしエッジの動きが悪く。ヴォイスコイルがある条件で斜めに動くなどした場合でもスレが発生するかもです。こんな場合にはエージングも無駄ではなさそうに思います。しかし、最近このヴォイスコイルのスレが他のユニットでも頻繁に起こり、ヴィンテージを楽しむ障害だなと思っています。

半日ほど小音量からエージングすると、スレはかなり改善しました。しかし、完全にゼロではありません。少し音量を上げると急に出始めます。Philips 4923851のヴォイスコイル調整は結構大事になりますので、今回はコレで終了させます。毎日聴いているうちに、もう少しは改善するかもしれません。ユニットの上下を回転させてみようか。・・・・回転させると電源・信号線が繋ぎにくいんだよな。ワニ口クリップを使用する弱点でもあります。
ヴィンテージ・ユニットはご高齢ですので、残念ながら過度な無理は御法度です。また、当時存在しない現代の音は、なかなか対応し難いかもしれません。そのような音でも平気で受け入れるユニットもありますので、ユニットの性格と健康状態を知っておく必要がありますね。だんだん負荷をかけていき、会話をするようにしてチェックするんでしょう。ダメな場合は壊れないうちにメンテナンスしてあげましょう。80歳のお祖母様に全力疾走を強いてはいけません。でも、スピーカーに対しては、それを強要しちゃう御仁もいらっしゃいます。

試しにPhilips 12cmだけをツイーター化した状態で聴いてみると、コンデンサーの威力で普通のツイータのような感じで鳴っています。この状態で能率のバランスは悪くないようです。高域の輪郭部分にシャープなエッジを立てている感じがして、裸で聴くのとは全く違う音色になります。スパイスの分量はこれで良し。

あるがままを受け入れる
旧車を生活に取り込む時、クルマの老化とどう向き合うか、どう受け入れるかを楽しむようにPhilips 4923851も今を受け入れることにします。新車のようにレストアするのも楽しいし、すべての加齢を受け入れクルマと自分の人生を重ねるのも良いものです。私は、後者の方が性に合っているので、スピーカーもそれで行きます。暖機運転は必ず励行しないとね。
カニ目は一度大きな追突事故に遭い、その時に丸裸にしてシャーシまでレストアしました。床やスカットルまで作り直したシャーシは、乗ると剛性が高まり新車時の感じが蘇りました。結局フルレストアし、エンジンもミッションもサスもOHまたはOH品に載せ変えました。この時点で、オリジナルのボディーやメカは半分ほど残っていただろうか? 残っていないな・・・。自分でできることは積極的に行い、ワイパーモーターを巻き直したり、オーバーヒート対策は、シュラウドを設計自作し追加して解消しました。最後はワイヤハーネスを現代的な材料で全て作りなおし、リレーを入れることで安全性を高めています。布巻きの昔スタイルのハーネスも入手可能なんですが、先を考えて現代の線を使用。でもポイントは残してあります。実はミイラのようになった元のハーネスが原因でクラクションが大きな音を出せず、バックしてきたRX7に向かって「ペフペフ」と小音量のクラクション鳴らしましたが、その甲斐もなく大きく損傷させれられました。ミラーに映らなかったそうです。車高低いですからね。

最後の画像は、プッシュロッドが損傷し、ガスケットも吹き抜けてしまった放置オリジナルエンジンです。修理できず、今はMGミジェットのエンジンをOHして載せています。ミッションもギアが欠けてこれも下ろしました。モーリス用を載せています。いつか戻すことができるだろうか・・・   今回はイレギュラーにAustin Healey Spriteの写真を使ってしまいました。

結果カニ目は、フルレストアすることになり、約1年半ほどで退院してきました。ですが、お婆ちゃんを無理に整形しツルピカ20歳の顔にしちゃった感があり、ボディーは20年近くワックスをかけずエージング。今ではほどよく艶が落ちて良い感じです。しかし、多くの方はピカピカのクルマを好むようなので、私は少数派でしょう。でも、今回撮影しながら疲労感を強く感じ、ワックスをかけてエンジンも磨いてあげようと思い始めています。

Philips 4923851のエージングが進むにつれ、中域も復活しはじめPhilips 12cmの音がうまくブレンドしています。過大な負荷をかけなければヴォイスコイルのスレも影をひそめてくれ、HipHopも楽しく聴けています。やはりヴィンテージは急いではいけませんね。
Philips 4923851の高域問題は、これでほぼ改善しました。シンバルも腹に響く低域も、初め聴いた時の雑なイメージが解消して自然に感じます。明るくなった感じですが、しっとり感も十分で、雰囲気良くPhilipsの世界に浸りきることができます。これまでこの仕事場では聴いたことがない、かなり良い感じの音。やはりこのPhilips 4923851 はただモノではない様です。この二ヶ月間で友人が三人も亡くなり気持ちが沈んでいましたが、ずいぶんPhilips姉妹とネコ様、そしてカニ目が癒してくれます。ありがたいことです。