雁皮紙がエッジの形状にフィットできず、接着不良になりました。音はちゃんと出ますが、貴重な遺産にダメージを与えてしまいました。
ずつとエッジ修理をイメージしてました。以前Sachsenwerkのエッジ修理で使った雁皮紙を使うことを考えてきました。修理するエッジの長さも大きく、そうすると硬くなる糊より、柔らかくてダンピング力がある接着剤が必要だろうと夢想しまして、最適な糊を探していました。そして行き当たったのが、tone qualityさんがヤフオクに出品されている「スピーカーエッジ張替え水性接着剤」でした。このお店では、スピーカーの修理や整備されたヴィンテージ・スピーカーなどを販売されています。またメンテナンス用エッジなども扱われておられ、その中にエッジ用の接着剤があります。木工用ボンドと違いがあるのか、まず購入してテストしてみることにしました。
この接着剤は、木工用ボンドに似ていますが、いろいろ違いがあり良い感じでしたので、ゲンコツのエッジ修理はこれで行くことにします。良かった点は、乾いた後のボンドが硬くならず柔らかいところです。木工ボンドとは違う硬さです。どのくらいの期間この状態を維持できるかは分かりません。接着剤が硬くなってしまうとエッジの動きを阻害しそうなので、重要なポイントだと思われます。ただし、コーンに浸透し色を濃くします。今回でしたら結構エッジの修理痕が黒く見えます。そして接着強度が非常に強く、雁皮紙は要らなかったようです。
まず、雁皮紙をコーン色にダイロンで染めて、エッジのカーブに合わせた補強紙を作りますが、今回は手を抜いて、スケッチに使用するマーカーで染色しました。耐久性は分かりません。あとは接着剤でエッジの裂けた場所に雁皮紙を接着するのですが・・・ 見事に失敗。接着剤の塗布で。年数が経ったエッジが「ふやける」ような感じで軟化し、ちょうど金魚すくいの濡れたアイスカップの状態です。それで雁皮紙の強度に負けてしまいエッジのギャザーを作ることができず、悲惨な結果を招いてしまいました。先にギャザーの形状で型を作り、雁皮紙を成形してから接着すれば良かったと反省。型を作るのは大変な作業ですが、今なら3Dプリンターが手間を省いてくれるハズです。それに、全周囲のサイズの型は要らず、大きくても1/4の長さがあれば充分でしょう。考えてみれば、このギャザー形状は三次元形状なので、濡れていてもカタチにするのは難しかった。残りの片方は、雁皮紙を使用しないで、紙の裂け目部分を直接接着して音を出してみることにします。こちらの方は、まだ幾分見栄えもよく、初めからこうすればとガッカリです。最悪ビスコロイドを塗ったエッジに見えるハズです。貴重なヴィンテージ・スピーカーの一本を醜い姿にしてしまいました。悔やまれますし、修行が足りません。こんなに不器用だとは思っておらず不覚の至りです。気になるようならエッジをアルカンターラに貼り替えかな、なんてことも考えられますが、これだと、まず練習から始めないといけません。
コーン紙の裏側とオモテの色が随分違います。裏側の色は、新品に近い20cmとほぼ同じ色合いです。いろいろ資料を漁ると10インチ・ゲンコツの画像が出てきますが、どれも入手したユニットと同じような茶系の色をしていますので、これは変色ではなくオリジナルの色のようです。コーン自体はビスケットのような感じがあります。しかし、初めて出す音は、エージングのためボリュームを絞りトゥイータも鳴らしていませんが、やさしく余裕も感じられ、低域は小音量でも感じ良く出ています。少し前のロクハンは、トゥイータによって低域が改善されましたが、さすが25cmともなると、平然と豊かな低域を出してくれます、そのかわり高域は少し丸い感じがします。やはりこちらもトゥイータは必要ですね。
ゲンコツ・ディフューザは20cmと同じサイズなので、比率的には小さく見え、ゴールドになっても存在感は20cmに劣りますが、機能的にはこれで良いのでしょう。スペックは、周波数帯域が35Hz〜16kHzと言うことなので、やはり重心の低さは魅力的です。能率は96dBで、これも素晴らしいですね。軽いコーンとアルニコが付くので、文句なしでしょうが、もし仮に蝶ダンパーだったら、さらにキレの良さが加わったかもです。
低域成分が多めの曲を聴いてみても、欲しいだけ低域は出てきますし、中域も豊かで人の声も優しく聴こえてきます。Telefunkenレッドニップルなどより、ずっと小音量から低域が出ますので夜中の音楽も迷惑になりにくく、日常使いに適したスピーカーです。ただし、心を虜にする小悪魔的なフィーリングは感じられず、個性は20cmの方が強いですね。
ここでSiemens 6 Ruf Isp 15dにユニットを交換してみました。そうした理由は、ゲンコツ25cmで聴く音楽にあまり楽しさが感じられなかったからです。ヴィンテージ特有の生き生き感が少なく、欲求不満が出ちゃいました。
久しぶりに聴くSiemens 6 Ruf Isp 15dは、片方に、ヴォイスコイルタッチが発生。惰眠の時間が長かったので、少しエージングを行うことにして、フレームの固定ネジも気持ち緩めました。こちらも小音量でエージングですが、それでも音楽が生き生き聴こえてきます。ああ、これが欲しくてヴィンテージ・スピーカーに依存するようになったんだよなと再確認。1時間ほどで異音も解消し、今は音楽を楽しんでいます。何だか一音一音が旨い。