励磁 Rullit Lab8 入院

Rullit Lab8が入院しました。前オーナーから大切にされてきたRullitでしたが、私のところに嫁いで来た時に、その症状はすでに軽く出ていました。低域でほんの少し異音が混ざります。どこかが共振しているような音です。いろいろな箇所に防振剤を貼り付けて対策を講じましたが、共振らしき音は消すことができませんでした。ヴォイスコイルが原因かなとも思いましたが、心情的にそれは考えないようにしていました。その持病が最近悪化して、苦しそうな声がだんだん悲鳴に聴こえてきます。

そこで思い切って病状を診断していただくことにして、いつもの吉田リペアさんに送ることにしました。大切なユニットなので、持参したいと思っていましたが、シトロエンもアルファもスタッドレスに寿命が来ており、雪シーズンの吉田リペア詣では断念。厳重梱包で宅急便に乗せました。

待つこと1週間ほど。吉田師匠よりメールをいただき、原因が判明しました。
ヴォイスコイルの偏心で、やはりそうだったか、という感じでした。ゴミなどが隙間に入り、スレる音とは違って聴こえていたので最初は、どこかの部位が共振していると考えていました。
大いに偏心していたALTEC4168Bは、盛大にズリズリ鳴いていて、この症状とは随分違った感じでした。それに低域全てで異音が出る事もありません。
症状は片側だけでしたが、偏心は二台ともにあるようです。ペアで送って正解でした。ズレの調整シロはなんと0.05mmだそうです。50ミクロン・・・・精密機器ですねRullit Lab8は。Lowtherより狭いギャップのRullitですから、仕方ないかもです。どのように調整するか是非見たいのですが、残念ながら見ることができません。確かに吉田師匠から送られてきた画像には偏心が見て取れます。偏心が原因でしたので、エッジは剥がさずに済みました。

レゴが好きです。あんなに高精度なオモチャはないだろうと思っています。二つのブロックをハメ込んだ感覚は、いつもピッタリです。さらに60年ほど前のブロックに現代のブロックを合わせてもピッタリきます。形状も色もピッタリ。こんなモノ滅多にありません。私の家には60年近く前に親がヨーロッパから持ち帰ったレゴが木箱に入ったまま置いてありますので、実証ずみです。30ミクロンの精度だと聞いていますが、それをコントロールするには、一桁上のミクロン単位のコントロールが可能でないと制御できません。Rullitも同じような精度が必要になるんですね。まるで電子部品のようなスピーカーです。

数年前、硬膜下血腫というのをやりました。撮影後の機材撤去で、シトロエンのハッチに頭をぶつけました。痛かったのですが出血もなく、撮影現場を後にしました。その日はハイエンド・アンプのカタログの撮影でした。それから数ヶ月後、初詣の境内で真っ直ぐ歩けない症状が強く出て、シトロエンに戻りしばし休憩。そのまま行きつけの病院に直行し頭をCTスキャン。その画像には、多量の内出血で歪んだ脳が見て取れました。ひどい歪みで、よくこれで運転できたなと感心しましたが、その時と同じ心境でヴォイスコイルの偏心画像を見ました。それがコレです。

確かに・・・よく見れば・・・
以下、吉田師匠のお見立て
「ビビり、異音の状況ですが、通常、単一信号の正弦波を入れて色々な周波数で鳴らし確認するのですが今回の場合、異音が発生するポイントが確認出来ませんでした。磁器回路スリット内のゴミや、各部の接着剥がれも無く正弦波では確認出来なかったのですが、唯一の問題として磁器回路スリットに対するボイスコイルボビンのセンターが偏って居たと言う事です。このユニットの場合、コーンもエッジも柔らかく、しなやかで単一信号だと問題が無くても複雑な音楽を再生した時にボイスコイルボビンがスリットに接触すると思われます。どちらのユニットも磁器回路スリットに対するクリアランスがズレて居りますので調整を行いまして戻します。
実際にそちらでの音楽再生で良く成るか不確定ですが、結果を教えてください。蝶ダンパー4点のナットを緩めて、0.05mmレベルの調整を行います。」

 

と、納得の診断でした。確かに、異音が出ない低域もあり、不思議に感じていました。当ブログを読んでいただいているHさんも、同じような悩みをAxiom80で感じられているようです。
同時に送られてきた画像には、ナットを緩めた跡があり、これは見落としていました。前オーナーが偏心を修正したと思われます。低域の異音は、当初ハンスジマー作曲のブレードランナーのアルバムで聴こえていましたが、今ではいつも聴いている他のアルバムでも聴こえ始めていました。Rullitを鳴らしているうちにボビンに数ミクロンの移動が起こり今に至ったのでしょうか。本当に神経質なユニットです。