同じ姿ながら、個性が違う

10吋のペアユニットをeBayで購入しました。同じ形状ですが、ブランドはジーメンスとイソフォンということで、「普通にペアとして使えます」という説明を信用し、どちらのメーカーにも興味がありポチしました。それは試作の平面バッフル一号機でSABAを聴き始めた少し後でした。ところが問題が起こりまして、なんとバッフルにこのユニットを取り付けることが出来ません。ほんの数ミリ程リングと干渉して、取り付きません。少し工夫しましたが、ユニットは惰眠を貪ることに。
色々なサイズのユニットを集め、そこから平面バッフルのデザインを起こしたわけでなく、その時手元にあった10吋ユニットを基準にしており、最悪な事態となりました。しかし、このままでは取り付かないユニットも多く出てきそうだし、結局一号試作機で見えてきた不都合を改善した、ニ号機の試作が必然になりました。このこと、以前にも触れていました。そんなことで、このユニットはずっとお預けになっていて、ここにきて改めて聞いてみます。

時間が経ってしまい、銘板も無くどちらがジーメンスなのかイソフォンなのか、もう分かりません。確かシルバーシャーシがイソフォンだったかもですが・・・だめだ、思い出せない。マグネット部分やコーンや、その他にも手掛かりになりそうな記述がありません。困ったことです。
このシャーシは、今でも普通によく見かける例のゴツくて無機質なデザインです。このシャーシはイソフォンが設計・製造し、供給を受けたジーメンスは独自にチューニングを行いブランドの音を作ったようです。マグネットなども同じで、DEWやMagnetfablicやBonnなどのメーカーが供給を行なっていました。よく見るとシャーシに若干の違いがありました。下の画像はジーメンスのユニットで、オリーブ系の塗装がなされています。


昔乗っていたジャガーとミニは、随分サイズが違いますが共通部品も多く、今も乗っているオースチン・ヒーレーとトライアンフも同様です。テールランプなど、パーツを上下逆さにして使用することでデザイを合わせたり、イギリスのお国柄が伺えます。
この二つのユニットも同じ考えなんでしょう。モノを量産する体制に、日本との違いが見られます。国境を超えて、同じシャーシを使う、ランチア・アルファ・サーブがあったり。日本の製造事情と違います。今だったら同じ半導体を使うアンプやDACなどをいろいろなブランドが出しています。欧州という立地が国を超えたOEM体制を発展させたのでしょう。
直近のニュースで、ホンダと日産が合併するとか。英国でも昔それが起こり国を巻き込んで改革しましたし、イタリアではFIATが、アルファやランチア、フェラーリなどを傘下に取り込み、イタリアのクルマ産業を守りました。日本も産業再編の時期かもしれません。でも、ホンダも日産も素晴らしいエンジンを持っていますね。ブランド維持でしょうね。資生堂も日産と同じように売上9割減という危うい感じがあります。頑張って欲しいものです。ドイツのオーディオメーカー事情も、面白い変遷がありました。

実は、この二つのユニットは、以前、測定を行なっていました。近接での測定で、高域は不正確ですが、それでも特性が見えてきます。それがこのグラフになります。

グラフで見ると低域が随分違います。トゥイータがあるので、重心が低い方が良いのですが。実際に左右で聴き比べると低域の違いで、どちらがジーメンスなのか簡単に分かりました。イソフォンの特性はヴィンテージスタイルのカマボコ型で、ジーメンスは今風です。測定しておいて良かったです。ですが、これだけ特性が違っていますが、能率は同じようで、実はeBayの説明通りステレオで聴いても違和感はありません。ちゃんとセンターで定位しますし、Philipsの聴きやすい音作りに対して、着色しないストレートな音が流れてきます。これはコレで他のジーメンスユニットなどの世界観と共通で、音作りに国民性が出ています。異母兄弟のように感じますが、欧州のスピーカーは皆同じで、今回は父親の血がヴォイスコイルのサイズ違いもキャンセルし、快適に音楽を流してくれます。

このユニットは、見かけより軽く、6Ruf Isp 15dなどに比べると少し安価にジーメンスを楽しめます。eBayではイソフォンの方が若干安く、もしかしたらコチラでもジーメンスの世界観を楽しめるのかもしれません。薄い金属板を使いフレーム構造で剛性を上げたシャーシで、ラジオやコンソール用の大衆向けと用して製造されていたのかもです。業務用のスピーカーとの違いが軽さに反映されています。コストダウンしてもイソフォン/ジーメンスの音を届けようとする工夫が行われたスピーカーです。

低域が多めの曲を聴くと、重心の低さを美味しく楽しめます。グラフでは、広域が頼りない感じですが、実際にはトゥイータが無くても高域に不満は感じません。耳障りな成分が無く、声も自然に響きます。平面バッフル側で低域を補完し、無帰還アンプでもバランスをマッチングしていますので、音楽は活き活きしています。
今、音量を下げて聴いています。実際、大きな音でオーデイオを楽しめる環境は多くはないと思われます。そのような設定でも音楽を楽しむことができます。これ重要なポイントですね。スピーカーだけでなく、ユニットの取り付け方や、重要なのはアンプの特性です。スピーカーの音を聴いているのではなくアンプの音を聴いている訳で、最後にユニットの性格かなと思っています。

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当ブログを最初からご覧いただいているAxiom80使いのHさん。神戸ファッション美術館で、現在公開中の特別展「ファッション写真が語るモード   ー写真とドレスの関係性ー」展を企画されました。一度でこれほどの写真家の作品をオリジナルで見ることができる展覧会はこれまでありませんでした。是非ご覧くださいませ。この先見ることができない大写真展です。2025年1月26日まで。www.fashionmuseum.jp/special/