嫁入り三号機は、センとウォールナットの組み合わせです。兵庫まで行き坂師匠に製作していただきました。サイドの彫刻をやりたくて、電動彫刻刀を二台も買ってしまいました。良い感じ・・
ユニットは制振金属のボルトを使用しコーリアンに取付け、ユニットのマグネットに制振金属のデッドマスを追加し余計な振動を抑えています。それに加えインシュレータなどにも使われるコーリアン効果で、エンクロージャの振動をガッチリ抑えこんでいます。箱鳴りを重んじたヴィンテージ・スピーカーとは逆の、現代のエンクロージャの考え方です。しかし、雰囲気は長い時間を過ごしてきたような佇まいで、新品臭さが有りません。
1950年代には、ルーバーでユニットが見えないスピーカーが沢山ありました 。当時のインテリアとしてユニットが見えると異質感が強かったのでしょう。それは現代でも同じです。オーディオ好きにはたまらないユニットであっても、主張が強いので、いつかはユニットの存在が無い箱を作ろうと考え、今回実現させました。ルーバーがあると、音に影響が大きいのではと、それが一番心配でしたが、ほぼ問題ありませんでした。真横で聴いても音楽は壊れません。存在感が強くてもスピーカーに見えにくいので、空間に音楽だけが漂う感じです。それが今回のデザインテーマです。
仮組の様子です。ネットワークはまだバラックです。
ユニットには、Airwaveという少し特殊なユニットを、片側に2台づつ組み込んでネットワークにより低域を確保しています。ツイータは、ソナスファーベルなどでも使用されていた、これより小さなツイーターは無いかもと思わせるPeerlessのOT19NC00を使用しています。仕事をしながら聴いていると、バイオリンや人の声が自然で、クラシックの低域も十分感じさせてくれます。本来f0が125HzのAirwaveから、なんでこんな低域が出せるの、と驚かされますが、この辺りは相島師匠の技術満載のエンクロージャになっています。測定しながらネットワークをデザインしていますが、音質は聴かないと分かりません。ヴィンテージ・スピーカーにも通じるような、ストレートな音質でベールが無い響きですが耳障りな音は皆無です。また、このAirwaveは平面スピーカーで、まるでヴィンテージ・ユニットの様な感じの音の出かたが魅力です。驚くべき特質です。表参道のクラブでも大型の平面スピーカーが活躍していますが、このユニットの遠い親戚のようです。
こちらが、このスピーカーが置いてあるカフェで、南イタリアをテーマにされています。三角型の存在感が強い建物です。当初塗装したては、ピンク色で、マゼンタ色のモダン・ビートルに乗る女性オーナーにとても似合う感じでした。今はピンク色が抜けて白に見えます。これが本来想定の色だったようです。今回デザインのスピーカーは、このカフェ・オーナーとマッチングさせてピンクの木を使いました。メインのストリートを少し入って店が突然見えると、まあインパクトが大きいです。いかにも南イタリアを感じるデザインです。
「 iLL NiBBiO 」が店の名前。トンビの意味だそうです。カフェの上空で何度か見かけました。店内にあるトンビの羽の額装もなかなかアートしています。手作りケーキもティーも夕方からのワインも日常を忘れさせてくれるでしょう。要予約ですが、お近くを通る際にはぜひお立ち寄りいただき、ティーと一緒にオーデォも楽しんでいただければと思います。
最初のイメージでは、スピーカー下のキャビネットを音響的に利用しようと考えていましたが、見事に当てが外れ良い音で響いてくれません。同行いただいた相島師匠から、スピーカーの下にレンガを入れてみましょうと提案があり、共振が大きすぎたキャビネットと縁が切れ、本来の音がではじめました。経験がものを言う感じです。ヴィンテージ・スピーカー用のオリジナル・アンプで鳴らしています。