1951年西ドイツ製
久しぶりにアルニコを楽しんでいます。低域が豊かなユニットを探していた頃、Telefunken L6と同時にこのユニットを入手しています。Rullitを聴き慣れた耳には、ほんの少し低域が弱く、しかし声は気持ち良く心に届きます。Rullitより随分優しい感じがします。Telefunken L6と比較しても、そのように感じます。6 Ruf lsp 15dは、とにかく繊細な感じが好きです。少し時間が経つにつれ耳が慣れてくると、低域もこれで十分かなと思わせてくれ、どこまでも存在感のある音に納得です。いつもと同じか、少し大き目の音量で聴きます。私の狭い仕事部屋でも飽和せずピッタリくるスペックです。部屋の隅々まで行き渡る豊かな波動は、いつまでも飽きずに音楽に没頭でき、まるで空気のような存在になります。
このSiemens 6 Ruf lsp 15dは、10吋ならではの実力が備わった、とても美しいユニットです。
実はアルニコに貼ってあるシールに執着があって、このユニットに出会った時は小躍りしました。ブルーグレイに塗装されたヨークと渋いオレンジ色がとても印象深く、ユニットに誇りを持ち製造されている感じがします。この後のVACプロダクトは事務的な雰囲気で、残念な感じがします。だいぶダメージがあるシールですが時間経過の長さを知らせてくれますし、なんだかとてもお洒落に見えます。表面の具合から「石ころ」や「おはぎ」にも見えることがあります。他のパーツと違い。随分ラフな仕上がりですが、こんな所に手作りを感じてしまいます。この写真に写っているのには、クレーターのような穴があります。日本製品だったら、これは使わないでしょうね。でも使っちゃう。ここは鉄の鋳物でしょうが、他とは違うマインドが見えてきます。溶けた鉄を感じるというか。音魂の一部というか、生々しい感じさえあり、熱を感じます。
当時eBayに同じユニットが北朝鮮から出品されていて、欲しいなと何度もページを覗いていました。さすが怖くて購入できませんでしたが結構なお値段でした。そのユニットにはお決まりの布袋が付属していて、お尻のシールもさらに美しかった。あれは、どうしただろうか。どんな経緯で北朝鮮に渡ったのだろう。かの地にもオーデイオを愛する人がいるんですね。政府の高官でしょうか? このユニット、流通が少なくなってきたようで、最近はeBayでもなかなか見かけなくなってきました。
このユニットのコーン裏側には、かろうじて51と読める、ほぼヨゴレに見えるプリントが残っていますので、1951年の製造と思われます。若干褪色があり、その色はかえって好ましい風合いです。
マグネシウム製の薄いシャーシは、少し酸化が進んでいますが、Stentrianユニットの腐食ほど進行は速くないようです。要注意箇所です。そして、ベークの三つ葉ダンパーはいかにもシャープな反応をしてくれそうです。フィクスドエッジは、まだしっかりした状態を保っています。このユニットはコーン紙とボビンの接着部に補強のために布製のリングが取りつきます。初期型の特徴ですが、あまり他では見ない仕様です。ヴォイスコイルの線のコーン取り付けは、昔のTelefunkenのように糸で結んでありこれも泣かせます。
6 Ruf lsp 15dは、非常に作りが良く、丁寧な組立作業とデザインには高級感が漂います。Telefunken L6は工業製品に見えますが、6 Ruf lsp 15dはあきらかに違います。Klangfilmでも使用された優れたユニットというのも納得が行きます。70年以上前のハイエンドな音ですね。
以前、測定したグラフをご覧ください。別な時に入手した、ずっと後の時代に製造された10吋Siemensユニットの測定結果と合わせて比較すると、低域の出方などに違いが見て取れます。左側が6Rufになります。後で購入のユニットは、Isophonとペアで売られていて、デザインも一緒で音響的に問題ないからということで入手しましたが、当たり前にダメでした。eBayは試聴できないのでリスクは大きいです。せめて、どちらかだけでもペアにしたいのですが、残念ながら、なかなか相手が見つかりません。良く見るシャーシなんですが・・・。どこにも書いてない型番も調べないといけません。
この測定結果だけ見ると、低域不足にも見えますが、実際にはしっかりした低域です。イヤイヤこのユニット6 Ruf lsp 15dは、お勧めです。ひと回り小さい弟の22シリーズも是非聴いてみたいと思っています。
6 Ruf lsp 15d 型番不明の後期製造Siemensユニット